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京町屋と西陣織の職人技。一度で両方楽しむなら織成館がお勧め!

  • 執筆者の写真: tripampersand
    tripampersand
  • 2016年8月14日
  • 読了時間: 5分

私が住んでいる西陣は今でも織物の街。だいぶ数が少なくなったということですが、通りを歩いていると機織りの音が聞こえてきます。今でも数百の業者がこの地域で織物に携わっているそうです。

そんな西陣で、機織りの職人さんの技術を間近で見られる場所があります。その一つが「織成舘」です。

織成舘の入り口

京都の町屋で伝統文化を味わう

織成舘は1936年に建てられた西陣の伝統的な家屋、町屋を改築して開設されたミュージアム。元々は帯地製造業を営む「渡文」(わたぶん)の初代当主の店舗兼住居として建てられたそうです。居間として使用されていた和室で、坪庭を眺めながらお茶とお菓子(桔梗の描かれた団扇型のかわいいお菓子でした)をいただいていると、束の間、私もこの素敵な家の住人になったような気分になりました。係の方は案内の後、戸を閉めて行ってくださり、他に見学者がいないと完全にプライベートな空間です。優雅です。でも、そんな優雅さに不慣れな私は早々にお茶を飲み干して、館内をウロウロ。

京町屋の居間

入り口入ってすぐは元々炊事場だったそうで、今でも使用されている井戸があります。かまど(京都ではおくどさんと呼ばれています。京ことばらしい柔らかさ。途端に親しみがある場所に思えます。)があった場所の上には天窓があって、光が差しています。

そういえば、我が家にも天窓がある!その下にはかまどがあったのかも、なんて今更ながら想像が膨らみます。

炊事場だったのその場所には豪奢な能装束が展示されています。江戸中期の装束の復原ということですが、一つ完成させるのに一年以上かかるそうです。

豪華だけど、派手すぎない。品があるというのはこういうことか、とうっとり眺めていると、京都が育み、現代に受け継いできた文化についても思いが巡ります。

この装束も「能」という芸術があってこそ、こうしてここに存在します。需要ということもありますが、金銭的な問題も・・・。庶民には想像できないようなお値段のようです。また逆に、西陣織の技術がなければ、これほど壮麗な衣装は作成できず、「能」という芸術が不完全なものになってしまうかもしれません。。そういう意味で一つ一つの文化を守っていく大切さを感じますが、さすがに「西陣織の帯、一つどうですか?」といわれて「はい」とは答えられません・・・。

鮮やかな能装束

二階には全国から集められた手織物の中から幾つかが展示されているということで、今は主に麻の織物でした。素朴な風合いの味わい深い織物ですが、説明を見ると、後継者がいなくて途絶えたり、現在その技法を受け継いでいるのは一軒だけ、といった様子です。手間暇かかる割に需要も少ないということで、必然なのかもしれませんが。どんどんと伝統文化が失われているそんな現状を残念に思いながらも、今日の私の装いはファストファッション。現在の大量消費社会は色々なものを犠牲にして成り立っているんでしょう。せめてファストファッションでも大切に着ようと思っているところに、声がかかりました。手織工場の見学時間になったようです。

西陣織の職人に出会う

手織工場は一日に5回ほど案内があるそうです。職人さんが織っている真横で説明を聞くことができます。素人丸出しで根掘り葉掘り聞きました。

西陣織は帯地などに使われるもので、色糸を使って模様を織っていくものです。通常、柄物の着物は刺繍や染めであり、西陣織とは異なるそうです。西陣織の着物もある、と思っていた私はへぇと思うことばかりでした。(ほんと、素人すぎて恥ずかしい限りでしたが、丁寧に答えて下さりました。)そういう意味で、能装束は特殊で、通常の帯より広い幅で生地を織り、大変な手間暇がかかるということでした。一日に10センチ少々しか進まないということでしたから、一着仕上げる生地を織るのは気の遠くなるような作業です。

しかも織るのは裏表逆。その方が生地や機械への負担が少ないそうですが、織る方は大変。下に取り付けられた鏡を見ながら、表の仕上がりを確認しつつ、織り進めるそうです。

ちょうど、見学に訪れた際は、その生地が織り終わったところでしたが、織り終わった後も縦糸はそのままで、織り上がった生地のところだけを切り離すそうです。もちろんそのまま断ち切ると縦糸も切れて終わり、となってしまうので、特殊な道具を使うということで、その取り付け作業中でした。

着物生地の場合は出来上がる毎に縦糸も外すことが多いそうですが、なぜ、糸を張ったままかというと、この糸を張るのに相当手間暇かかるということでした。確かに見るからに大変そうです。4千本以上の糸を一本ずつ手作業で繋いでいくということでした。

今では機械織りがほとんどということでしたが、出来栄えが全く違います。サンプルがありましたが、手織は必要なところにだけ糸が織り込まれているので、裏側の見た目も美しく、使用する糸の量も少ないので生地も軽いということでした。その分、何倍もの手間がかかっています。高級になるのももっともな話です。

その他、メッシュのような隙間のある紗の帯は一見、シンプルに見えましたが、ルーペで拡大してみると、縦糸に撚りがかかりながら複雑に織られていることがわかります。まるで組みひものようです。他では真似できない手仕事ならではの技法ということでした。

こういうものを身に着けるのが本当のおしゃれ、なんでしょうが……。説明してくださった方も、良いものは何度見ても新鮮な驚きがある、というようなことをおっしゃっていましたが、確かに本当に良いものは飽きることがなさそうです。

工場の隣では西陣織の帯が売られていました。季節とTPOに合わせて使用できる帯が決まっているということで、着物を着こなすには高いハードルがありそうです。

10万円からありますよ!それに合う着物も見繕いますから!ということでしたので、いつの日か、西陣織の帯を身に着けて街を歩けるくらい諸々自分に備わった日には、お願いしたいと思います。

見学のみなら500円でした。事前申し込みが必要ですが、5000円で手織体験もできるそうです。私は工場見学だけで大満足でした。(というより、おもちゃの織り機もろくに使いこなせなかった身としては、体験の選択肢は初めからなし。)着物や帯に興味のない方も、その技術にはただ感動すると思います。見学だけなら1時間程度ですので、京都観光の合間に訪れてみてはいかがでしょうか。

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