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ドイツへの旅 2日目② ヘプ(チェコ)

  • 執筆者の写真: tripampersand
    tripampersand
  • 2016年5月9日
  • 読了時間: 4分

 いつ国境を越えたのかわからないままに、気がつけばヘプの街だった。

 石畳の街は歴史を感じさせるが、スーツケースを引くには恐ろしく不向き。ガタガタと無粋な音を響かせながら、本日の宿へ向かう。

 駅から真っ直ぐ坂を下っていくと、人で賑わう一帯に出た。ここが旧市街。宿はその中心部から脇道を少し入ったところにあった。改装されたばかりとあって、清潔感が漂い、品の良いホテル。但し、ホテルスタッフには全く英語が通じない。数字でさえ紙に書いてやり取り。もどかしいのは相手も同じ。微妙な笑顔で誤魔化しながら説明を切り上げると、早々に鍵を渡してくれる。

 ドアを開けると正面に大きなクローゼット、左手がバスルーム、右手にベッドルーム。バスルームだけでも昨日泊まった部屋くらいの広さがある。昨日のオレンジとは打って変わって落ち着いたインテリア。安眠できること間違いなし!

 日本ではまず無理な贅沢。といっても2人で1万円もしないから、本当は贅沢でもないんだけれど。

ヘプの広場

 早速荷物を置いて街へ繰り出す。旧市街地中心の石畳の広場の周囲はピンク、黄色、オレンジとカラフルな建物で取り囲まれていた。その屋根の急勾配から無数の出窓が顔を覗かせていて、辺りを伺っているような様子が面白い。

 観光地なのに「観光客」な私達は街の中で浮いている。すれ違うのは地元民ばかりのシーズンオフ。そんな中、旧市街地の端にあるヘプ城まで行ってみる。城といっても今は城壁しか残っていない。

 同じくやってきたのはラブラブなカップル。まだお洒落にも目覚めていないようなあどけなさ、ながら寒さも吹き飛ばすようなラブラブぶりに当てられる。

 城の周囲は広大な公園になっていたけれど、小雨がちらつく肌寒い夕方に行くところではない、少なくとも妹と二人では。。。

 城跡のすぐ背後には、ヘプに暮らす人々の日常が広がっていた。散歩中のおじいさんが通り過ぎ、子ども達が声を上げながら駆け回る。私達は迷路のように入り組んだ道を気ままに歩く。古い建物の壁は剥げ、屋根瓦はずり落ちそうになっているけれど、そこに生きる人々の活気が漂っているせいか、寂れた印象はない。

 6時ともなるとどこも店仕舞い。人がまばらになった街頭では冷え込みも一段と厳しくなった気がする。寒さを凌ぐように入ったのはチョコレート店。時間をかけて吟味した後、二粒のチョコを購入。店を出て早速口に入れると体に染み込むような美味しさだった。

 私達は列車でパンを齧ったきり。これでは夕食には物足りない。レストランを探してみるけれど、どこも閑散としている。そもそも選択肢はあまりない。結局、ホテルの一階にあるレストランへ向かった。

 唯一のスタッフは携帯でメールをしていた。

「あの、やってますか?」

 まず、そう尋ねた。広々としたホールには誰もいなかったからだ。どこに座るか迷う。隅に座るのもおかしいので、落ち着かないながら真ん中辺りに腰を下ろす。

 そこへ英語のメニューを持って現れたお姉さん。英語ができるわけではないらしい。お姉さんの説明ではよくわからなかったスープと、魚のグリルと、ポークソテーのクリームソースを注文。それからビールも。チェコは世界一のビール消費国。チェコ産のビールか尋ねたけれど、やはり英語は通じず。まあ良いか。きっとそうだろう。

 程なく彼女はどこかへ電話を掛け始めた。もしかして……。

 苦味が後に残るすっきりとした味わいのビールと、しゃきしゃきした食感の残るみじん切りカリフラワーのスープが運ばれてくる間に、鼻歌を歌いながらおじさんがやって来た。

 今から準備を始めるのか……。そもそも食材はあるのか。魚なんか注文してしまったけれど、一体いつ仕入れたんだろう?

 そんな心配も、ビールを飲んで、スープで体が温まってくるとどこかへ消える。思ったほど待たされることもなく料理が運ばれてきた。

 お皿もしっかり温められている。見た目も上々。味は……。

 美味しい!

 シンプルな白身魚はハーブが利いてさっぱりとした味付け。好みに合っている。茹でたじゃが芋はそれだけで美味。ポークソテーはキノコのクリームソース。肉とキノコの風味がしっかりとソースに移っていて、濃厚なのにしつこくなくて味わい深い。塩加減もちょうど良い。添えられていたのは、モンブランのクリームのような形状のパスタ?素朴な味で、濃厚なソースに合う。

夕食のポークソテー

すっかり満腹になって、気になるチェコデザートにはトライできなかった。会計は・・・財布を取り出して、ようやく伝わる。

 会話は成立しなかったものの、お姉さんと心は通じた気がするし、チェコ料理も文句の付けようがなく、自分達の選択にすっかり満足。店内を流れるバロック音楽が3周目に入った時には、妹と顔を合わせて笑ってしまったけれど。

 お腹も心も満たされて部屋へ戻り、ゆったりサイズのダブルベッドへ寝転がるとすぐに睡魔がやって来る。それを振り払うようにシャワーを浴び、せっかくなのでバスタブにお湯も溜める。

 シャワー室はバスタブと別に設けられていた。のんびり湯船に浸りながら、贅沢な気分で一日を振り返った後、街に響く鐘の音に耳を傾けながら幸せな気分で眠りについた。

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