ドイツへの旅 2日目① フランクフルト→ヘプ
- tripampersand
- 2016年5月9日
- 読了時間: 5分
値段に比例するとは言え、ホテルの壁はもう少し厚くしてほしい…。ハネムーンだったのかもしれないけれど、夜中にはしゃぐカップルの声を歓迎できるほど寛大にはなれなかった私たち。ものすごく寝不足。
外は小雨がちらついて、肌寒かった。乗り場に置いてあったのは昨日と同じ券売機で使い方はマスター済み!と思ったけれど、料金はゾーン制。中央駅までは幾らなの?妹と思案しているうちにトラムが来た。近そうだからきっと最低料金と自分を納得させて、慌ててチケットを購入。
ちょうど通勤時間帯だからか道は混雑していて、トラムはノロノロと進む。途中見かけた自転車のお兄さん(お洒落でなかなかハンサム)にも抜かされる。それでも駅に着くには早すぎた。予約した列車の出発時刻まで1時間以上ある。

中央駅は列車の出発地点。改札があるわけでもなく、平行に並んだレールは駅構内で行き止まる。屋根はあるので雨に濡れることだけはないけれど、吹き曝しだから寒い。我慢ができずトランクを開け、荷物を広げて更に着込む。ようやくミュンヘン行きの列車が滑り込んで来た時にはすっかり体が冷え切っていた。
今日はフランクフルト・ミュンヘン間の途中にあるニュルンベルクで列車を乗り継ぎドイツとの国境沿いにあるチェコの街、ヘプまで行く。ドイツ横断の旅。
妹が日本から予約していた座席は6人用の個室。先客が一名。室内は広くて何より温かくて快適。途中、サラリーマンが加わったけれど、十分な広さがあるので問題ない。穏やかに列車は走る。頭を流れる曲はもちろん、あのテーマ曲。(「世界の車窓から」by 溝口肇)
フランクフルト周辺では車窓の向こうに流れたいた森や川が、次第に丘陵地帯へと変わり、穀物畑のパッチワークが視界を覆うようになった。耕したばかりの黒い大地、金色に実った穂、牛が食むための草原。時折、小さな集落が顔を見せる。尖った屋根に統一された色調で、グリム童話にでも出てきそう。時々、丘の上に姿を現す風力発電機は環境への取り組みが進んでいるドイツならでは。曇天の下でも白く聳える羽は美しく、流れる風景に色を添え、旅人をメルヘンチックな気分にさせる。隣のおじさんは……たぶんなってないな。
列車に揺られること2時間、ニュルンベルクへ到着。フランクフルトとは雰囲気が違うけれど、窓越しに見てきた町とは打って変わって大きい。街へは出ずに先を急ぐことに決めて、ニュルンベルクからヘプへのチケットをDB(ドイツ鉄道)の券売機で購入する。5カ国語から英語を選び、時刻表を確認。出発駅、到着駅を選べば、乗り換えの詳細まで検索でき、プリントアウトもできてとっても便利。日本にも導入希望!駅構内で見つけた銀行でチェコクローネへの両替も済ます。
2両編成の電車に乗り込んで、外はパリッと中はふんわりで素朴な美味しさのプレッツェルと、ずっしり中身の詰まったアップルパイを齧っていると(駅のパン屋で購入していた)、がやがやと年配グループが乗り込んできた。どうやら4組のご夫婦。中の二人のおば様(正確にはおばあ様)がてきぱきと指示を下し、それなりに混み合っている車内で座席を確保。どうやって運ぶんだろうと心配になるほど大きな荷物を抱えている。私達の隣にも一組のご夫婦が座ったが、旦那様の声は一言も聞かれず。おば様方がパワフルなのは万国共通。
それぞれの席に落ち着いたと思った8人だったが、ほどなく立ち上がり、お互いの席を行ったり来たりで騒ぎ出す。その渦中にいたのが高校生くらいの男の子。どうやら道を教えているらしい。おば様方の勢いに怯むでもなく、自然体。一瞬、彼らの孫かと思ってしまった。結局、一行は次の停車駅で慌しく降りて行った。
喧騒が過ぎた車内に車掌さんが回って来た。切符の確認だった。
「ヘプまで行くの?だったら車両を乗り換えて」
二両編成の列車は途中切り離されて、それぞれ別の方面へ行くらしい。車内表示の行き先が「バイロイト」で、私達が目指す方向とは明らかに違い、おかしいな、とは思っていたのだが。
列車が停まる気配を見せたので荷棚に上げたスーツケースを降ろそうとしたけれど、悲しいかな、手が届かない。靴を脱いで座席に上がろうとしていると、横からぬっと手が伸びてきて、あっという間に荷物が降ろされた。
「あ、ダンケ、シェーン」
斜め向かいに座っていた男性だった。天井に頭が届きそうなくらいの長身、なのに顔はとっても小さい。青い目がキュート。ちょっと胸がときめく。ひげ面なのが残念。
出口へ向かおうとしていると、先ほど検札に来た車掌さんが私達を手招きしている。どうやらちゃんと乗り換えるか心配して見に来てくれた様子。有難いけど、「大人な女性」を目指した旅には想定のない手招きだな。
彼に続いて前方の車両に移ると、先ほどの8人グループの姿があった。成る程。車内表示は「ドレスデン」。今度は安心して座席に着くものの、うとうとする間もなく乗換え駅に到着。
駅は閑散としていた。乗り換えた列車にエンジンはかかっておらず、運転手もいない。出発数分前になって、ふらりとやってきたおじさん。耳にはピアスが光り、とってもくだけた服装の彼が、前方の運転室のドアを開け、鼻歌交じりで機器の電源を入れ始める。こちらの心配を他所に、列車は定刻どおり動き出した。おじさんのこと不審者と疑ってごめんなさい。
乗客の多くはチェコ人だろうか。車内から聞こえてくる言葉はドイツ語ではない。もちろん、英語の放送もないから列車が停まる度に身を乗り出してホームの駅名を確認。間違って降りたら最後、1時間は待ちぼうけを食らう
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