オランダへの旅4日目④古都ドルドレヒトへ
- tripampersand
- 2016年9月22日
- 読了時間: 4分
そうして、再び電車に乗って、ドルドレヒトへやって来た。ドルドレヒトは中世に貿易港として栄華を誇った歴史ある街。
ロッテルダムからは電車で15分。駅周辺はやはり都会に近いから街も大きい、と思っていたけれど、歩き始めて10分少々。旧市街に入ると雰囲気は一変。狭い通りの両側に古い建物が立ち並び、静かで穏やかな街に教会の鐘の音が響く。

本日の宿はB&B。調べた住所の前まで来ると、窓に小さくサインが出ている。ここに間違いない。ただし目の前に立ちはだかる頑丈そうなドア。もちろん閉まっている。手が痛いくらい頑張ってノックしたけれど、応答はない。
どうしようかと話していると、突然、一台の車がドアの前に止まった。その中から女性が叫ぶ。
「ドアの横にベルがあるわよ!」
ノッカーでもなく、日本のチャイムのようなボタンでもなく、なるほど、この突起が呼び鈴なのか。初めて見たわ、このタイプ。控えめ過ぎて気がつかなかった。

押すとすぐに中から男性が出てきた。
「いらっしゃい!」
人の好さそうなオーナーと握手して中に入る。
「まずは飲み物でもどうかな?」
そう勧められているところに、先ほど車から叫んでいた女性がやって来た。
「私の妻だよ」
なるほど。親切な人もいるもんだ、と思っていた。まさかここの家の方だったとは・・・。でも通り過ぎたのは本当に偶然。運が良かった。
そんなわけで、早速話も盛り上がり、4人でテラスでお茶をする。
とっても気さくなお二人で、最近生まれたお孫さんやアムステルダムで働く息子さんのことなど、話は尽きない。娘さんが日本に留学していたことがあって、その時、オーナーご夫婦も日本に行ったそうだ。また、ドルドレヒトの街自体、江戸の末期に日本の軍艦を製造したと教えてもらった。テシマ、テシマ!と仰っていたけど、本当は出島(でじま)なんです・・・オランダと貿易していたのは。見せてもらった本にも「teshima」とあった。オランダではテシマと伝わっているんだろう。
それはさておき、日本との縁を大切に思って下さっているようで、こちらも嬉しくなった。
思いがけずおしゃべりが長くなったが、お二人にお勧めのレストランを聞いて、街に行ってみることにする。
ドルドレヒトで
5時は過ぎているので、飲食店以外は閉まっている。それでも、可愛く飾り付けられた小ウィンドウや1軒ずつ形も色も異なる建物、カフェで寛ぐ人々を、暮れ始めた街角に佇んで眺めているだけで、特別な気分になる。

宿で教えてもらったシーフードが美味しいというレストランに行ってみると、生憎の満席だった。また明日来てね、と言われたけれど、ドルドレヒトは一泊のみ。
もうそこにしようと決めていたから、他のアイディアなんてない。散々街を彷徨った後、ギリシャ料理店に決めた。
日本にあまりないせいか、海外に行くと高確率でギリシャ料理店に入ってしまう。特にムサカは私のお気に入り料理のトップ10には入る(トップ5は決められないので)。ムサカとはひき肉と野菜を重ねてベシャメルソースをかけて焼いた、グラタンやラザニアみたいな料理。自分では作らないから余計に、見つけると食べたくなってしまうのかも。
グリークサラダともちろん私の意見でムサカを一皿オーダー。あまり食欲がないので、しつこいものはな、と言っていた妹も、これは美味しい!と口に運んでいる。お店によってベシャメルソースがこってりしていたりもするけれど、ここのはソースはあっさり、チーズの味が全体を一つにまとめている。ああ、やっぱり好きだな、と幸せに浸る。
グリークサラダはシンプルな味付けだけど、ボリュームたっぷり。塩気のあるチーズとピタパン、オリーブの実がよく合う。更にムサカには別のサラダもついていて、もうこれだけでお腹いっぱい。
満足して宿に帰り、渡されていた鍵を取り出す。玄関のドアを開けようとするも、なぜか鍵が回らない。開けにくいからと、事前に練習もさせてもらっていたのに・・・。渾身の力を込め、しばらく格闘したものの無理だった。
「そうだ、裏口に行ってみよう」
建物の反対側、裏庭につながっている入り口があって、自転車の人はそこから入るとオーナーが話していた。ただ、私たちは自転車に乗らないし、使わないだろうと聞き流していたので、記憶が曖昧。
裏側に回ると、簡素なドアが並んでいる。おぼろげな記憶を頼りにドアに書かれた番号を確かめる。
「たぶん、ここ」
ドキドキしながらも鍵を差し込んで、ゆっくり回す。
開いた!
胸を撫で下ろし、そっと建物に入る。すでに人気はない。オーナーのプライベートな部屋が並んでいる前を通って、部屋へ向かう。階段が急なので、気を付けないと落っこちそうになる。
オーナーが内装をやり替えたという部屋は、そんな手作りの温かみを感じさせるものだった。ただし、バスルームの入り口にドアがない。カーテンもない。他人同士だったら、ちょっと落ち着けないかもしれない。今は道連れが妹ということで、すぐにそんなことは気にならなくなり、そうして、1日が終わった。
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